2012年8月8日水曜日

宇宙と生命

夜空に輝く無数の星を見上げた時、あなたはそのどこかに生命を宿した惑星があると考えますか?

天文学者、宇宙物理学者の多くは、見つけることが可能かどうかは別として、地球以外にも宇宙のどこかに生命が存在するはずだと考えているようです。宇宙の大きさと宇宙を支配する物理法則の厳格さを日々実感している人々にとって、地球だけが全宇宙で唯一の例外だなどということは到底信じられないのだろうと思います。一方で、生物学者の多くは地球外生命の存在に否定的です。肯定的に見る場合でも、それは太陽系内に極めて原始的な生命を想定するだけで、太陽系外に地球と同じように生命にあふれた惑星が存在すると考える生物学者は極めてまれです。奇跡的なまでに精緻に組み上げられた生命の不思議を解明しようと日々格闘している生物学者には、生命の誕生、進化が一度きりの幸運としか思えないのです。無機的に見えるこの広大な宇宙は、実は生命で満ち溢れているのでしょうか?それとも、たった一つの地球を生み出すためにこの広大な宇宙が用意されたのでしょうか?

私はこれまで生物学者として地球上の植物や藻類が行う光合成の研究に携わってきました。小さな細胞内のさらに小さな葉緑体の中に解くべき謎は無限に存在し、とても宇宙を見上げる余裕はありませんでした。そこへ国立天文台の方から共同研究のお誘いがありました。現在建設計画中の30m望遠鏡を使って太陽系外の惑星を観測し、生命の痕跡を探そうと持ちかけられました。これはサイエンスなのかSFなのか混乱して返答に困りましたが、宇宙に生命が存在するという仮説を立て、それを観測によって検証できるのですから、確かにサイエンスの体裁を保っています。生命を発見する見込みが高いとは思えませんが、もし発見できたとするならばその成果は計り知れません。何より、宇宙生物学という未踏の地は指をくわえて見過ごすにはあまりにも魅力的に見えました。いるかいないか分からないからこそ調べるのです。

宇宙と生命の話を始めたいと思います。